Million@FINDER

Keep it simple.

’SIMPLICITY’より抜粋 Ken Rockwell

 

シンプルさとは、写真において最も重要なコンセプトである。

 

この記事では、機材のシンプルさについて書きたいと思う。アイデア、見せ方のシンプルさは勿論もっと重要である。これには構図のシンプルさも含まれる。

単純さは力だ。単純明快であればあるほど、相手にはよく伝わる。シンプルな構図は、より強く働きかける。より強い感動を呼び、より多くの人々に認められる。

この記事の内容は、世に多く出回っている記事の内容とは全く異なる、しかしとても重要な話である。すなわち、あなたが持つカメラが、シンプルであればあるほど、そして機材の数を減らせば減らすほど、より良い写真が撮れるのだ、という話である。

機材のスペックなり、他の気を散らす様々なファクターを減らせば減らすほど、本当に自分が撮りたい写真が何なのか、という答えに近づくことができる。

 

 

 

我々は、新しいレンズを買い続ける。もっと広角が必要な場面では、もっと広角のレンズを使ったほうが良く撮れると信じて。すべてをフレームに入れることができる、といっては広角を買い、遠くがもっとよく撮れるといっては超望遠に手を出す。月の上のスポーツ写真を撮れると信じて。

間違っている。

機材を増やせば増やすほど、写真は下品になっていく。機材のことを考えるのに忙しく、写真のことを考える時間はまったくなくなる。

これは深刻な問題である。今日、ほとんどのアマチュア写真家は、新しいカメラのことや設定方法のことを考えることと、写真の撮り方を考えることとは全く別物なのだということに気づいてさえいないように見える。

私は、写真について語っている人をほとんど見たことがない。かわりに、皆はカメラについて語っている。フォトショッププラグインについて、HDRモードのアルゴリズムについて、語っている。しかし、シャッターボタンをクリックするとき、レンズの前にあるもの、それこそが一番重要なのだ、ということを忘れかけている。

 

 

 

機材について考えれば考えるほど、写真について考えなくなる。

 

さらに悪いことに、複雑な写真機というものは、アマチュア写真家に対して、永遠にクズ写真を撮り続けさせる。本当にどうでもいい、余計な情報、懸念、気がかりを与え続けることによって。

「RAWで撮ったほうがいいかな?」

「AdobeRGBを試そう」

「三脚を使って30分に500枚を撮ろう、そしてHDRで完璧にパンフォーカスの写真をあとでつくろう」

 

こういった余計な思惑に気を散らされ続けるために、いつまでたっても自分が「なにを撮っているのか」に気づくことがない。三脚に取り付けたままのカメラで30分間に500枚のシャッターを切り、つなぎあわせるかわりに、30秒間、良いアングル、良い構図、良いロケーションを探す努力こそが必要なのに。

 

 

f:id:BobosuBlog:20161113085056j:plain

 

 

 

シャッターを切ること、これはもっとも簡単な工程である。被写体を見出すこと、これがもっとも困難な工程なのである。

適切な設定でシャッターを切ることに集中力を奪われてしまい、被写体を見るパワーは残されていないのである。

もしも良い被写体を見つける努力を怠るようでは、どんなに素晴らしい設定でシャッターを切っても、すべては無駄なのである。

これは優れた写真家がアイフォーンで素晴らしい写真を撮ることからもよく分かる。いかにして撮るかではない、いかによく見ているか、そこが違うのである。

 

 

 

我々の注意力・思考力には限界がある。どのカメラで、どのレンズで、どの設定値で、後処理はどうする、そういったことに苦心をしても、結果には全く現れないのである。

写真は、被写体、構図、しぐさ、照明、視点、インパクト、パースペクティブ、バランス、色、重さ、線、瞬間、空間、質感、そして他の多くのものから構成されている。

 

 

あなたは写真を撮るときに、カメラのことを考えている。レンズのことを考えている。設定値のことを考えている。それとも、レンズの向こうにある出来事、物事のことを考えているだろうか?

私もまたそうした一人であった。機材選定、設定値変更に忙しすぎて、いったいなにを撮っているのかを考える暇など全くなかった。

唯一必要なのはレンズの向こうの被写体であるのに、すべての注意はカメラ、レンズ、設定値に埋め尽くされていたのだ。

シンプルさが決定的に大事なのは、このためである。
たくさん持っていればいるほど、気は散ってしまう。

 

一方、写真ということになると、もしも我々が複数のレンズを持ち歩くとき、また複数のカメラを持ち歩くとき、そして何種類ものフィルムを持ち歩く場合、常に余計なことを考え続けなければならない。

「レンズを換えようか?」

「ISOはいくつが良い?」

「ちょっと車に戻ってデカレンズ持ってこよう」

 

さらに悪いことに、複雑な写真機というものは、アマチュア写真家に対して、永遠にクズ写真を撮り続けさせる。本当にどうでもいい、余計な情報、懸念、気がかりを与え続けることによって。

 

金持ちの連中がライカを使うのは、メカ性能が良くて、素晴らしいレンズが揃っているからでもある。
しかしながら、シリアスな写真家たちがライカを使うのは、それとは異なる理由による。
ライカがシンプルだからである。


必要な機能しかない。常にシャッターが切れる。シーンが変わっても引き続き写真に集中できる。そして、ライカ以外には今日、その機能のすべてを理解できるような、シンプルなカメラは全く発売されていないのである。

 

写真も同じである。撮るときには自由でなければならない。そして日々学習していなければならない。被写体に集中しなければならない。異なる構図を試し、違う角度からも見て、写真のことを考えなければならない。カスタムファンクションメニューの設定値のことを考えていてはダメなのである。

我々の注意力・思考力には限界がある。どのカメラで、どのレンズで、どの設定値で、後処理はどうする、そういったことに苦心をしても、結果には全く現れないのである。

写真は、被写体、構図、しぐさ、照明、視点、インパクト、パースペクティブ、バランス、色、重さ、線、瞬間、空間、質感、そして他の多くのものから構成されている。

あなたは写真を撮るときに、カメラのことを考えている。レンズのことを考えている。設定値のことを考えている。それとも、レンズの向こうにある出来事、物事のことを考えているだろうか?

私もまたそうした一人であった。機材選定、設定値変更に忙しすぎて、いったいなにを撮っているのかを考える暇など全くなかった。

唯一必要なのはレンズの向こうの被写体であるのに、すべての注意はカメラ、レンズ、設定値に埋め尽くされていたのだ。

 

 

 

私はこれまでに、何百、何千の写真家に、プロアマ含め会ってきたが、ここに秘密の鍵がある。これらの人々の中で、次の二つのこと双方にあてはまった人は2人しかいない。

 

1.画素とカメラプロファイルの詳細、その裏の仕組みについてよく知っている

2.素晴らしい作品をコンスタントに発表している

 

カメラの様々な設定に迷わされずに撮り続けるためには、一つのカメラ、一つのレンズに固執するのが良い。カメラは、あなたの想像力の拡張機にとどまらず、あなたの身体の一部となり、視覚の一部となる。決して別々の道具ではないのだ。

 

あなたがカメラのことを考えているとき、あなたは写真のことを考えていない。

 

あなたが写真のことを考えていないとき、写真は最低の出来になる。

 

シンプルなカメラはあなたにカメラのことでなく、写真のことを考えさせる。

 

カメラがあなたに奉仕すべきである。あなたがカメラの奴隷、写畜になってはいけない。

カメラはあなたの感性の外側にあり、撮ろうとする写真とは無関係でなければならない。

あなたの想像するイメージは被写体から沸いて出てこなくてはならない。

そのイメージにカメラが影響を及ぼすようならば、それはやめなければいけない。

 

 

 

店員やテレビ・雑誌・ネットの広告があなたに、なにかよく分からない新しい機能を説明してきたとしたら、その意味があなたに意味不明であれば、それは無視すべきである。

見ることを学び、撮ることを学ぶべきである。

素晴らしい作品を撮ることができるようになったら、そのときに初めて、新しいカメラのことを考えれば良い。

初心者がよくはまってしまいなんにも撮れなくなる誤解というものがある。それは、すべての焦点距離のレンズを持たないとダメだ、というものだ。

このような誤解を広めているのは、あなたに新しいレンズを売りつけたい連中か、すでに買ってしまった自分を正当化したい初心者たちだけである。

 

機材を増やしても写真は上達しない。

 しかし、もしも素晴らしい偉大な写真を撮る方法を学んだら、おそらく、それ以上新しいカメラやレンズが必要だとは考えなくなるだろう。

 

 

 

今、私は写真のワークショップで教えている。そして私を含め参加者の誰1人として、カメラの持つ全機能の1%も理解していない。なぜなら、残りの99%は、撮影に際して気を散らすだけのゴミだからである。ニコ爺の私ですら、NIKON D300でブラケット撮影する方法をパッと思い出せない。カメラは今日、本当にバカげたことになってしまった。

 

’ 抜粋’

Keep it simple.

Merry Christmas.

Ken.